【書評】『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』(岡田 尊司)/誰もが生きづらさをかかえている

パーソナリティ障害とは偏った考えや行動パターンのために家庭生活や社会生活に支障をきたした状態のことです。今の日本社会を生きていて、生きづらさを感じたことはありませんか? その原因はもしかしたらパーソナリティ障害かもしれません。パーソナリティ障害と聞くと、なんだかごく一部の人たちの精神疾患なのかと思う方もいるでしょう。しかし、本書を読んでみればそれが誤りだと気付くはずです。本書で取り上げられているパーソナリティ障害の種類は、

・境界性パーソナリティー障害

・自己愛性パーソナリティ障害

・演技性パーソナリティ障害

・反社会性パーソナリティ障害

・妄想性パーソナリティ障害

・失調型パーソナリティ障害

・シーゾイドパーソナリティ障害

・回避性パーソナリティ障害

・依存性パーソナリティ障害

・強迫性パーソナリティ障害

の10種類に上ります。

これらのパーソナリティ障害を、それぞれ読んでいくと、少なくともどれか一つは自分に当てはまるものが見つかるはずです。自分にパーソナリティ障害があるなんて認めたくないのが普通です。しかし、もし自分の生活の中で自分でも不可解な行動をとってしまったり、理想的な振る舞いが出来ないことで深刻に悩んでいるのであれば、まずは自分が通常ではない障害を負っていることを自覚することで解決策が見えてくるはずです。

そもそもなぜこのようなパーソナリティ障害が生まれてしまうのでしょうか? 本書ではパーソナリティ障害の研究は、世界大戦による勝利を納め、経済成長を進めていった後のアメリカで進んだと書いてあります。やはり過酷な労働によって人間の精神が軽視されてきたことが一つの原因として挙げられるのでしょう。そしてこれは日本でも同じことが起きたと言えます。さらに重要なのが全てのパーソナリティ障害の原因として親の虐待やネグレクトが考えられるということです。自分は直接親から危害を加えられていないという人でも、例えば兄弟と能力を比較され劣等感を植え付けられたとか、子供の感情を全く無視されてきたなどの事例でも、その子供がまともな大人に成長するには相当厳しい道を歩むことになります。

とは言え本書では、そんな親たちが生まれてしまった社会的背景にも言及しているところが特徴的です。昔より物質的には豊かになったはずなのに、だからこそ親たちも自己実現をしなくてはいけないという義務感を持ってしまい、子供の教育どころではない状況です。贅沢な悩みかもしれませんが、私はむしろ社会が複雑になったせいで、人間の悩みもより複雑になっていってる気がします。どちらにせよ、成熟していない大人の下に生まれてしまった子供たちが一番哀れなのは言うまでもないでしょう。

また、本書では現代社会の母性の欠落だけでなく父性の欠落についても言及しています。母性とは愛情ですが、父性とは社会を生き抜く知識やスキルを与える存在です。父親は仕事で忙しく子供の教育に参加していないため、どう生きていいかわからない子供たちが増えているのもパーソナリティ障害を生み出す原因の一つかもしれません。

ちなみに私は「自己愛性パーソナリティ障害」と、「失調型パーソナリティ障害」が特に自分に当てはまると思いました。自己愛性パーソナリティ障害は、自分の事を特別な人物であると錯覚してしまうような障害です。このような書評ブログを書いているのも、他人が書いた本を自由に論じることによって自己の特別感を得ることで満足しているのかもしれません。また失調型パーソナリティ障害は自分の世界に浸ってしまい、常識に無頓着な内面を持ちます。これは自分が売れてる小説より好きな小説ばかり読んでいる点でも納得できます。

このように、自分あるいは周りの人たちを本書で挙げられているパーソナリティ障害に当てはめる事で人間理解を深めていき、社会生活を営む上でのヒントになることは間違いないでしょう。全てのパーソナリティ障害の章で、それぞれのパーソナリティへの対処方法が載っていますので、ハウツー本としての特徴も持っています。そういう意味ではこの本は心の病を知る本ではなく、社会的にふさわしくないとされたせいで人間のパーソナリティの奥底に沈められた特性を理解するための本ともいえるのではないでしょうか。

また、本書でパーソナリティ障害を持った有名人の逸話が数多く出てくるのですがそのどれもがシンプルに伝記として簡潔にまとめられた内容で面白いので、そこもお得感があります。ココ・シャネルの言葉は、私に勇気を与えてくれました。

巻末付録として、質問に答えていくだけで自分のパーソナリティ障害がわかるチャートが付いてきます。就職や転職で必要とされる自己分析が上手くいってない方は、これをやることで新たな自己像に出合えるかもしれません。

【書評】『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』(岡田 尊司)/誰もが生きづらさをかかえている” に対して1件のコメントがあります。

  1. Theresa-B より:

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