【感想】『BAMBOO GIRL』(人間六度)

本日はKindle Unlimetedのおすすめで見つけた小説のご紹介です。

結構面白かったです。これから何が面白かったかを語っていくのですが、大まかなジャンルとしては学園アニメ風のSFですね。本格SFとまでは行かないくらいで抑えているので、難解な用語などは出て来ず、文系の私には読みやすかったです。Kindleのレビューに若い人に読ませたいという意見もあるように、高校生が主人公なので若者向けではありますが、結構深い内容を扱っているので大人でも楽しめると思います。

物語の始まりは、天文学部に所属する高校生の賢木ソラ(男)はある夜、一人で山に行き星を観察していたのですが、急に夜空が光り出し星々が流星群のごとく落下してきます。その中の奇妙な物体から一人の少女が現れ、この出会いからとんでもない物語に発展していきます。

タイトル『BAMBOO GIRL』からわかるように、かぐや姫とリンクしていく話でもあります。この少女が実は宇宙から来たのですが、この小説の後半のほうから日本史上の出来事と今回の少女の邂逅との繋がりが紐解かれて行って話のスケールが膨らんでいきます。

つまり、宇宙に存在する地球とは別の文明との接触というのが今小説のテーマの一つとなっているんですね。そういう観点から読んでいますとかなり興味深い部分がありました。この宇宙から来た少女「ヒカリ」はソラは自分にとってクリッパだというシーンがあったと思います。このクリッパというのは少女の住んでいた星では友達と奴隷の中間のような関係を言うらしいのです。このように向こうの星では他者との関係を示す用語が地球よりかなり沢山あり、これらの用語を総じて「人間関係詞」と呼んでいます。こういう架空の設定が面白いですよね。SFだけど文系寄りのSFという感じで、私はこの小説のこういう部分が大変気に入りました。

それから、恋人との関係を「ソーラ」と呼んでいます。このソーラには共犯の意味があるというのです。なぜこんな意味になったかを説明すると、ヒカリのいた惑星では人間同士が争わないように心の乱れを非常に危険視します。人間同士で争う事を禁止するため、「アンチカニバライザー」という心理的性質を(おそらく進化の過程で獲得したのだと思いますが)持っています。共食いを意味するカニバリズムからくる言葉ですね。

つまり結婚についても、ヒカリのいる星ではお見合いをよりシステム化した社会的ルールによって成り立っているので、恋人という段階を排除しています。なんだか味気ない世界観だなという印象を受けますが、これ実は我々の社会もこうなる方向に進んでるんじゃないかとちょっと怖くなるメッセージが込められてるんですよね。近年ではマッチングアプリによる結婚も私の周りでも当たり前になっています。恋人との交際関係が無い20代もどんどん増えて来ていて、かくいう私もその一人です。上の世代からは、「最近の若者は草食化している」「俺が中学生の時は恋愛の事しか考えてなかったぞ」などと言われることもあります。

若者が草食化した理由として、経済的に厳しくなったというのがよく言われる気がします。しかし、やはり恋愛というものが与える心理的負担を敏感に感じ取る若者が増えてきたのではないでしょうか。恋愛することで傷つくリスクを回避する形で後回しにしてしまうという、自分の感覚で語ってしまってますが、この小説で語られている内容とリンクする部分は大いにあると感じます。こういう部分で人間の社会心理をかなり捉えている小説になっていますね。

これで前半は普通に学園ドラマを展開してて、たまにクスっと笑える部分もありました。作者さんの小説を書く力のすごさを感じます。さらにこの本の特徴として、あとがきも重要な内容をふくんでいます。それは作者さんに関する内容なのですが、なんでこういった小説を書くに至ったかが少しわかるような内容になっています。ここも是非読んでほしいところですね。

【感想】『BAMBOO GIRL』(人間六度)” に対して1件のコメントがあります。

  1. Johnathan V より:

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