【感想】『雷の季節の終わりに』(恒川光太郎)/日本のどこかにある霊的な世界

本日は恒川光太郎さんの小説の感想です。

このブログで恒川光太郎さんの小説を取り上げるのは2回目ですね。前回は『夜市』でした。

実はこれ以外にも途中に『ヘブンメイカー』と『秋の牢獄』もKindleUnlimitedで読むことが出来たので、その辺りも含めて、恒川光太郎論のようなものも語れたらなと思います。大雑把な内容に留めますが少しネタバレっぽい内容も含むので、読んでる途中で興味が湧きましたら、ブログを読むのをやめて実際に小説を読んでみて頂けると良いかと思います。

今作『雷の季節の終わりに』は現実世界と異世界にまたがるお話ですね。と言っても恒川さんの小説って大体この説明の範囲内に入るのですが。

本作の特徴としては初めから異世界を中心にしてストーリーが進行していくところでしょう。異世界といっても剣と魔法の世界ではありません。例によって、日本古来の雰囲気を感じさせる、霊的な世界と言えばいいのでしょうか。

今作には前半後半で2人の「鬼」が登場するのですが、主人公目線でストーリーが展開していく時は、本当に人間性を疑うような恐ろしいサイコパスという印象を受けます。しかし、視点を変えて、鬼目線で話が進んで行くと、彼らが殺害した人々にも碌でもない人物がいたり、彼らがそんな鬼になってしまった経緯についても、人間の弱さから来る部分もあって、非常に評価の難しい内容で面白いです。

私が一番好きな登場人物?としては、「風わいわい」というキャラクターがいます。こいつが主人公に取り憑く形で表れて来るのですが、なんかかわいいんですよね。私の中でのイメージでは火の鳥と少し被る所があります。要はちょっと性格が悪いということですね笑。逆に言えば神聖な存在であるにも関わらず、人間臭さが強くてそれが魅力になっているとも言えます。

ここで少し、恒川光太郎作品に共通する特徴を確認したいのですが、それは登場人物の性格の豹変があると思います。この辺りがホラー小説に分類される所だと思うのですが、ずっと優しいと思ってた人がある時急に本性をむき出しにし、危害を加えてくるという恐ろしい展開が今作にもありますね。これは現実で詐欺などで人に騙された経験を持つ人にはむしろリアリティがあってハマる要素なのではと思いました。かく言う私もその1人なのです。

恒川光太郎作品の別の特徴としては、このようなオカルティックな現象・存在・共同体が、この国のどこかに実際に存在するのではないかと思わせる表現力もあると思います。「今回の小説ではこういう不思議設定でやっていきます」というのではなく、「あなたの住んでる世界って、実は裏側はこうなってるんですよ」という書き方なのです。恒川さんの小説を読んでいると、この国ヤバいなと思わされてしまいます(笑)。

まあ恒川光太郎さんは私にとって、KindleUnlimitedをきっかけに出会ってハマった小説の中でも代表的な作家さんになっています。今作『雷の季節の終わりに』でも、誰にも思いつかないような世界観で、大変楽しい読書体験をさせて頂きました。

【感想】『雷の季節の終わりに』(恒川光太郎)/日本のどこかにある霊的な世界” に対して1件のコメントがあります。

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