【感想】『人間の顔は食べづらい』人肉食が合法化された日本で起こった大事件(白井 智之)

タイトルと表紙のインパクトにやられてつい読んでしまった一冊。こんだけホラー小説をブログで紹介しまくってても、グロいのは苦手な私としては、いかにもグロシーンが多発しそうな本で途中でリタイアするんじゃないかと心配でしたが全然そんなことは無く、むしろ久々に面白すぎて「ページをめくる手が止まらない」というような小説に出合えて、大変満足しています。さて、どんな小説だったかをまだ読んでない皆さんに是非お伝えしたいのですが、序盤がどんな感じで始まったかを思い出すためにまずはAmazonのあらすじ文を引っ張ってきたいと思います。

あらすじ(Amazonより引用)

「お客さんに届くのは『首なし死体』ってわけ」。安全な食料の確保のため、“食用クローン人間”が育てられている日本。クローン施設で働く和志は、育てた人間の首を切り落として発送する業務に就いていた。ある日、首なしで出荷したはずのクローン人間の商品ケースから、生首が発見される事件が起きて――。異形の世界で展開される、ロジカルな推理劇の行方は!? 横溝賞史上最大の“問題作”、禁断の文庫化!
文庫特別書き下ろし掌編に加え、道尾秀介の解説も収録。

この本の紹介

まずこの本をどのジャンルに分類すればいいかと言うと、推理小説かなと思います。読み始める前はグロい系のホラー小説かなと思ったのですが、冒頭いきなり殺人事件から始まりますし、物語全体を通して色んな登場人物が自分なりの推理を語るのです。もちろんいい感じにグロシーンも挟んできますので、そういうのが好きな人も楽しめるかと。とにかくインパクトを与えるために過剰にグロシーンを入れるような作品は私はあまり好きではないのですが、この小説に関しては読者をしっかりゾクゾクさせてくれるような、趣味のいいグロさを表現出来ていると思います。

しかしそれだけではこの小説の面白さは説明できない気がします。改めて読んでいる最中を思いかえしてみると、今何が起きているのかというのを頭の中で想像するのがすごく楽だった気がします。これは作者の文章力が独善的にならずに、しっかり読者に分かる表現を選んでいる、言わば小説の上手い小説家だからだと思います。人のクローン肉を加工する工場なんて非現実的な舞台設定ですが、このような世界に読者の意識を持ってくるには、続きを知りたくなるようなストーリー展開や、魅力的な人物描写などが必要になるはずです。実際読み進めるごとに真犯人に迫っていくような緊迫感がありましたし、登場人物も中々個性的で会話のシーンでも台詞がスラスラ頭に入って来て退屈しなかったですね。私の好きな登場人物は由島三紀夫です。結局あいつ何だったんでしょう(笑)。

人肉食を公的に認めた社会という設定にも抜かりが無かったように思います。食糧問題を解決する意味でも世界的に肉を食べることをやめていった世界。その中でも日本ではヒトのクローンを生み出すことでそれを肉の代わりにした。しかしそんなことをしたら当然倫理的な問題で世間から追及を受ける。しかしヒトクローン産業を強く推進する政治家、冨士山はこれに饒舌に反論していく。終いにはヒトクローン反対派=反日という構図を生み出し、ネット民もこれに乗せられていく。世界のお金持ちたちは本物の肉が食べたいので、密かに日本のヒトクローン肉を輸入しており、それを成長産業として日本経済の救いにしようとしている……。といったように、強引ではありますが一先ず読んでいる最中には、人肉食が許された世界にも「そういうものか」と思ってしまえるような説得力を持たせることに成功していると思います。人肉工場での作業工程の描写なんかも、現実にそういう仕事に携わっている人がいるかのような、妙にリアリティのある書き方で、全体的にそういうのが上手い作家さんだと感じます。

まとめ

『人間の顔は食べづらい』は第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作にもなった、優れた名作です。人間の細胞を利用したクローンを、あくまで人権のないモノとして加工してそれを食べるという世界に対して、読みながら自分は反対か、それともアリなんじゃないかとか考えながら読むとより深く楽しめると思います。私はやっぱり抵抗がありますね。多くの人がそうだと思いますが、人間として超えちゃいけないラインというのは理屈じゃなくて感覚的なものだと思うので、これを超えてしまうと社会そのものがとんでもない不幸を経験すると思います。さて、小説に関しては巻末で道尾秀介さんが熱心に推薦しているように、読み終えた後誰かに勧めたくなるような、不思議な面白さがありますので是非この記事を読んでいる方にも読んでいただきたいです。

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【感想】『人間の顔は食べづらい』人肉食が合法化された日本で起こった大事件(白井 智之)” に対して1件のコメントがあります。

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