【感想】『三丁目の地獄工場』(岩城裕明)

こんにちは~、暑すぎてやばいですね(笑)。

こんな暑い季節にはホラー小説を読むに限ると思い、今回ご紹介する『三丁目の地獄工場』を読んでみたのですが、そういう涼しくなるとかそんなホラーじゃなかったですね。

まず本書の著者である岩城裕明(いわき ひろあき)さんは、2014年に『牛家』で第21回日本ホラー小説大賞に入選された小説家です。今回ご紹介する本には牛家は収録されていないのですが、なんと『牛家』も現在Kindle Unlimitedの対象になっているので、どういうわけか読み放題で読めてしまうということで早速そちらもDLしておきました。

私がKindle Unlimitedでよく読む貴志祐介さんや恒川光太郎さんもホラー小説大賞受賞作家なので、Kindle側からあなたへのおススメとして本書を紹介してもらえました。素晴らしい。

全体の感想としては、いいCDアルバムを見つけたような満足感がありましたね。というのは、本書は短編集なのですがホラー小説というカテゴリに分類されつつもかなりバラエティに富んだ内容になっていて、それぞれ違った楽しみ方ができます。テンション上がる曲があったり、しんみり出来るバラードがあったり、謎に中毒性の高い歌詞のないイントロ曲があったりという感じですね。

別の言い方をすれば、「世にも奇妙な物語よりも奇妙な物語」ですね。余計わからないですね(笑)。要するにただ幽霊が出てくるような怖さじゃなくて、とんでもない設定だったり、笑っちゃうような話だったり、ちょっと寂しくなるような終わり方だったりと色々テーマが違う中で全体として奇妙であるのは共通しているという。それで地上波では放送できないような内容という事ですね。今回は各話毎に感想を言っていきたいと思います。

怪人村 かいじんむら

田舎出身の若者が、都会に出ていって就職までしたのですが、なんか自分に合わないと感じて仕事を辞め、また田舎に戻ってきたらやばいことになっていたというお話です。最初の方は家族との会話も自然な感じで流れていくので、何も起こらないのですが会話や状況の節々に違和感がある。これで私は後から実はこの時からおかしくなっていたというのがわかる「意味怖」的な話かなと思ったんです。

でもそんなもんじゃなかったです。もうその後の展開が意味不明すぎて笑っちゃうんですよね。私がこのブログで紹介した本で一番近いのが『へにゃらぽっちぽー入門』でした。これはもうホラー小説というよりは「奇書」ですよ(笑)。これ読んでこの本はちょっと普通じゃないなと、期待が膨らみました。

女瓶 めかめ

死体を入れると復活する瓶のお話です。それを瓶人(かめびと)というのですが実は「瓶人」という話が別にあって、これはその前日譚にあたるお話のようです。時系列的にはこちらを先に読めて正解だったのかもしれません。この女瓶に関しては、本書の中で一番ホラー小説らしい怖い話ですね。江戸川乱歩の世界観に近いですが、江戸川乱歩はオカルト要素はないのでやはり独特の味があります。サスペンス物のような衝撃的なラストがありました。「瓶人」を読んでなかったからこそ、「マジで!?」って思う箇所がありましたね。

ぼくズ ぼくず

気持ち悪いです。RADWINPSの『G行為』みたいな気持ち悪さがあります。正直こういうの好きじゃないんですが、嫌いでもないんですよねぇ。これに関してはこの本で一番解釈が難しい話だと思うので解説が欲しいなと思って検索してみたのですが、なかなか上手く説明してくれる人がいないようなので、この話だけ2回読んでみました。

この主人公の男の子がいじめられているであろうことはわかると思います。注意しなければいけないのは、普通の小説の書き方ではないので、話してる内容の前後に脈絡がない場合があるという事です。例えばお弁当を取り出すあとにゼリーだったと続きますが、ゼリーだったのは机の中に入ってたモノですよね。実際人間の思考は小説のように綺麗な文章ではなくその時の状況によって急に違う事を考えだすので、ある意味この話の書き方はリアルですね。

話としては、授業中にお腹がすいてしまって、教科書を立てて先生にばれないように早弁をはじめてしまう。ご飯で胃が満たされる過程で、あらゆる妄想が膨らんで止まらなくなり、文章もさらにカオスになっていく。最終的に先生にばれて叱られる。こういった社会的不適合な部分があるためにいじめられてしまっていると推測できる。といった感じでしょうか。

一番判断が難しいのが、さいごにこの男の子がクラスメイトを刺してしまったのか、あるいは妄想で終わったのかですね。刺してしまったなら先生の「授業中に君は何をしているのだ」は反応があっさりしすぎている気がしますし、逆に刺してないなら先生が彼に、誰かに言う事があるだろうかと思ってしまいます。敢えて結論を出させないような書き方をしているのかもしれませんが、正解にたどり着いてないモヤモヤはありますね。

地獄工場 へるこうじょう

本書のタイトル作品がやってきました。地獄という響きと、本書のタイトルになっていることからよほど恐ろしい話だと思っていたら、一番明るいと感じる話でした。実際内容としては暗いのですが、地獄の役割である罪人をいたぶるという行為が事業化してて、そこで務める従業員のストライキとかもあってシュールギャグとして面白いんですよね。それで主人公も結構受け入れが早いのであまり恐怖を感じずに読み進めてしまいます。

恐怖回かと思ったらギャグ回だったということですね。一番世にも奇妙な物語で出してもおも白そうな話ではあります。結構労働に対するメッセージ性みたいなものも含んでいるのですが、そこはそれほど重要ではなくて、純粋に作者のぶっ飛んだアイデアを楽しみ尽くせばいいと思います。

キグルミ きぐるみ

この話はねぇ……この本で一番面白かったですね。人って面白すぎると笑うんだなと(笑)。まだ面白くするのかと、最後にすごい話を入れてきました。

話はある小さな劇団の芝居によって描き出されるストーリーから展開していくのですが、その芝居で登場する猫の着ぐるみが特徴的なお話です。何が面白いかというと、最初は謎に包まれた着ぐるみの存在や、それに対するかみ合わない家族の会話など、違和感があります。しかし段々と謎が解明されていって最終的には全てまるっと解決するというカタルシスが得られる内容になっています。

それだけじゃなくて、その解明のされ方が、芝居の枠を超えたメタ認知的な領域にまで及び、哲学的な内容を含んでいます。それから話が切り替わるときに、客目線、役者目線、芝居の主人公目線など、描き方が変わっていき多角的な視点で全体をとらえることが出来るので、深みが一層増します。

今一度自分が何に感動したのかを考えてみたのですが、そもそも芝居というのが、限られたスペースと少ない小道具でいかに厚みのある世界観を生み出していくかという試みだと思うのです。実際この話でも限られたキャストで、こんなに完成された物語が作れるのかと、作者の腕に感動してしまったんですね。そこも話全体と芝居の性質がリンクしてて上手いなと思いました。

話としてはこれで全部なのですが、この本はあとがきも結構面白いんですね。文芸評論家の東雅夫さんが書いているのですが、ホラー小説とは打って変わって明るい語り口で、いい気分で締まります。

こういう自分にストライクな小説がおススメされてくる状態になったのは、Kindleで好きな作品を探し続けてよかったと思います。『牛家』の方も読むのが楽しみです。

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