【感想】『フラッガーの方程式』/硬いタイトルに反して最高に笑える深夜アニメパロディだった(浅倉 秋成)

こんにちは

今日紹介するのは浅倉秋成さんの『フラッガーの方程式』という小説です。浅倉さんの小説は『教室が一人になるまで』と『ノワール・レヴナント』を以前に読んでいます。これらの作品を先に読んでいた先入観で、今作もタイトルから類推して『ガリレオ』のような科学を題材にした推理小説なのではないかと思っていたらびっくり。『フラッガーの方程式』は作者違うんじゃないと思うくらいコメディに寄せた、めちゃくちゃ笑える深夜アニメパロディだったのです。まずはあらすじから見ていきましょう。

公式のあらすじ文

「物語の主人公になって、劇的な人生を送りませんか?」
平凡な高校生・涼一は、日常をドラマに変える《フラッガーシステム》のモニターになる。
意中の同級生佐藤さんと仲良くなりたかっただけなのに、生活は激変!
ツンデレお嬢様とのラブコメ展開、さらには魔術師になって悪の組織と対決!?
佐藤さんとのロマンスはどこへやら、システムは「ある意味」感動的な結末へと暴走をはじめる! 
伏線がたぐり寄せる奇跡の青春ストーリー。

今作の特徴

『フラッガーの方程式』の、一般的な現実を舞台にした小説と違う所は「フラッガーシステム」という超常的な力によって主人公が主人公(!)となってしまい、ご都合主義的なストーリー展開が最初から約束されている前提で小説がスタートします。作者の浅倉さんは、現実世界を舞台にしながらも、学校の生徒が超能力を使えたりと、非現実的な要素を含む小説を書くという特徴があります。今作もその例に及んで『世にも奇妙な物語』のコメディ回のような設定の作品になっています。主人公の行動がすべてストーリーの伏線となってしまうため、「フラッガーシステム」が最終的にどのように主人公の行動を認識してストーリーを組み立てていくのかを楽しむ小説とも言えます。

細かい部分で私が感じたこの本の特徴としては、新しいことに挑戦しているところです。それは何かというと、主人公のセリフのかぎ括弧が、漫画の吹き出しのようにギザギザに強調されていて、主人公のその時のテンションが読んでいる側に伝わりやすくなっています。私の知る限りこういった技法を使っている小説は初めてだと思います。『フラッガーの方程式』はライトノベルではありませんが、こういった読書という趣味の硬さをぶっ壊していくような手法を取り入れている点でライトノベルより時代の先を行っている若者向けの小説だと思います。

内容は若者向けとはいえ、使われるギャグは『ドラゴンボール』とか『キテレツ大百科』とか、その世代じゃないとわからないものも結構あって、一方で最近の深夜アニメの傾向を理解している事が求められるので、アラサー世代くらいがドンピシャ世代かもしれません。私でも元ネタよくわからないものもありましたが、ただのギャグシーンなのでわからなくてもそもまま読み進められるのが良いところです。

私が面白いと思ったところ

物語の結論が読めてしまうような核心的なネタバレは避けて感想を述べていきます。私にとってこの小説はめちゃくちゃ面白かったのですが、その理由としてまず深夜アニメをたくさん観てきたからという経験による部分が大きいと思います。逆に言うと、深夜アニメにあまり馴染みのない人、或いは深夜アニメは好きだけど、『攻殻機動隊』とか『カウボーイビバップ』のような硬派は物ばかり観てて、『聖剣使いの禁呪詠唱』のようなコテコテのテンプレアニメを観たことが無い人にとってはあまりピンとこなくてつまらなかったかもしれません。

作者はあとがきで深夜アニメを300作品以上観てきたと言っています。私もそこまでは行きませんが、アニメ自体は200作品以上観てきて、その内深夜アニメが150以上、テンプレものは50作品以上は観てます。だからこそこの本で出てくるお決まり展開みたいなものに共感して笑ってしまうのです。

作者の他作品との比較

浅倉秋成さんの私が読んだ他作品と比べると、まず『教室がひとりになるまで』とは全く似ても似つかぬ作品です。『ノワール・レヴナント』に関しては、読書好きの女の子のキャラがすごくコミカルだったので、そこは通じるものがあります。ただ作風自体は真面目で『ノワール・レヴナント』は終始緊張感のあるハラハラドキドキの小説なので根本的にジャンルが異なります。正直私はこの三作の中で『フラッガーの方程式』が一番好きです。『ノワール・レヴナント』の方が小説としての完成度は高いでしょうけど、いかんせん長すぎます(笑)。『フラッガーの方程式』も普通の小説より少し長いですが、笑いとテンポの良さのおかげで一気に読み終わってしまいました。

類似する作品

『フラッガーの方程式』に似ている作風の小説を探すと、なろう小説原作の『その無限の先に』や現在『引き篭もりヒーロー』を連載中の二ツ樹五輪さんのコメディ調に近いです。二ツ樹さんのラノベは、主人公の周囲のキャラクターが、ぶっ飛んだ行動やしょうもないボケをかますことで主人公のツッコミスキルをいかんなく発揮できるような「ご都合主義」を得意とするものです。『フラッガーの方程式』でも、東條を主人公とシステムが認識して作られた世界にもこのような傾向が見られます。

それより私が一番近いと思う作品は『俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している』です。略して『脳コメ』は主人公の脳内に、ある日突然究極の選択を迫る天の声(cv:中田譲治)が聞こえるようになり、その選択のどれかを行動しないと酷い激痛に襲われるというコメディ作品及びアニメ作品。①主人公が人智を超えた力に振り回される、②主人公がツッコミスキル保持者、③テンプレ深夜アニメに見えてテンプレ深夜アニメを突き破っている、④めちゃくちゃ笑える、などの共通点が見られるためこれが一番近いと私は思います。『脳コメ』は愛すべきバカアニメです。

まとめ

『フラッガーの方程式』は浅倉秋成作品の中では異色のギャグに突き抜けたコメディ作品です。学園で巻き起こるジメっとした事件を解決する重厚な推理小説を期待する方は気を付けてください。むしろ何も考えずにゲラゲラ笑いたい人は買っちゃってください。当ブログはKindle Unlimited対象書籍を紹介することを一応コンセプトにしているので、2023年2月現在『フラッガーの方程式』はKindle Unlimited対象になっているので、会員の方は無料で読めます。

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【感想】『フラッガーの方程式』/硬いタイトルに反して最高に笑える深夜アニメパロディだった(浅倉 秋成)” に対して1件のコメントがあります。

  1. Edwardo-J より:

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