【感想】『ただ、それだけでよかったんです』(松村 涼哉)

第22回電撃小説大賞を受賞した小説です。

正直読んでいて胸糞悪くなる部分は所々あったんですが、それでもページをめくる手を止められなかったのは、やはり人間というのは復讐劇が好きなのかもしれません。

というのも本書で扱っているテーマとしては学校内のいじめになります。始まりは、いじめによって自殺してしまった男の子のお姉さんが、その真相を知りたいと、弟の通っていた学校に行き、校長から話を聞くところからになります。そこから視点が切り替わって、いじめをした生徒の視点から自殺が起きる前に遡ってストーリーが進んでいくというトリッキーな構成になっています。

この小説と同じジャンルの作品としては、貴志祐介さんの『青の炎』とか、浅倉秋成さんの『教室が、ひとりになるまで』があると思いますが、上に書いたような小説の書き方によってもそれらの作品とは明確に差別化できるでしょう。

それ以外にも、この小説のある意味一番変わっている要素として、いじめの事件が起きた学校で導入されている特殊なルールが挙げられます。それが「人間力テスト」というもの。校長先生の偏った思想によって導入されてしまったこのルール。他の生徒からどれだけ評価されているかが学期毎に採点されて期末テストのように自分の点数がわかります。

Kindleのレビューではこの小説への低い評価の中で、ストーリーがちぐはぐとか展開が唐突すぎるとかそもそも人間力テストがわけわからんみたいな意見も多かったんですよ。でも私はむしろ最初に人間力テストというものが導入されている非現実的な世界の話なんだと割り切ってしまえたので、ご都合主義的な展開だったとしても違和感なく読み進めてしまえたんですよね。

小説として破綻がないかというのもすごく重要ではありますが、それよりも私は作者が何を伝えたいのかに興味を持ちました。これは『進撃の巨人』みたいに作者が結構ストレートにメッセージ性を込めてくる作品だと思うんですね。(思えば話が進む毎に人物に対する評価がまるで変ってくるのも進撃の巨人に似てるかもしれません)

物語冒頭の校長の語る教育論とかもそうですし、主人公の言う「革命」っていうのがまず社会に対して明確に訴えたい意思があるからこそ革命という表現を使うはずです。その「革命」って一体なんだったんだというのが物語全体のミステリーとして機能しているのが読み進めるモチベーションになっていた気はしますね。若者向けの内容にはなると思いますが、心を刺すような小説を読んでみたい方にはおススメです。

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