【感想】『記憶屋』/他人の嫌な記憶を消すことは正しいことなのか?記憶屋という都市伝説のミステリー(織守きょうや)
あなたには消したい記憶はありますか?
こんにちは
今日紹介するのは『記憶屋』という小説。第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した作品です。私が読んだ印象としては、この本はホラーというよりはミステリーかなと思います。ホラー小説大賞に選ばれる作品には、結構「これホラーか?」と首をかしげることが多い印象なので、気にしないでおきましょう。さて、この本の感想を述べていきたいのですがその前に一応あらすじを載せておきます。
あらすじ(公式)
もしも「記憶屋」が、つらくて忘れたい記憶を消してくれるなら、あなたはどうする――?
夕暮れ時、公園の緑色のベンチに座っていると現われ、忘れたい記憶を消してくれるという怪人、「記憶屋」――。大学生の遼一は、そんなものはただの都市伝説だと思っていた。だが互いにほのかな想いを寄せ、一緒に夜道恐怖症を乗り越えようとしていた先輩・杏子が「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも忘れ去ってしまう。まさかと思う遼一だが、他にも周囲で不自然に記憶を無くした人物を知り、真相を探り始める。遼一は、“大切なものを守るために記憶を消したい”と願う人々に出逢うのだが……。
どんな内容の小説か
この小説は、「記憶屋」と呼ばれる口裂け女のような都市伝説をめぐるお話です。記憶屋とは他人の記憶を何でも自在に消してしまうという能力を持つ存在です。しかしその実態はかなりぼやけており、ネットのオカルト系のサイトや学生の間での噂話の域を出ません。そして主人公・遼一は、ある出来事をきっかけに「記憶屋」の存在を意識し始めます。記憶屋とは一体何なのか? その正体に遼一が挑んでいくのがこの小説の最大のミステリー要素であり、見どころになってくると思います。
本書のジャンルとしては、ホラー小説という事になっていますが、私はミステリー小説として楽しみました。人によってはノスタルジックホラーという分類もされているようです。「記憶屋」という都市伝説をテーマにした作品なので、ホラーということなんでしょうけど、あんまり読んでいて怖いと思う要素はないです。深夜2時に読んでも平気なくらいには。
私が読んでみた感想
この小説はすごく落ち着いた雰囲気の物語です。正直内容に引き込まれるというほどのインパクトはないのですが、「記憶」をテーマにしたことによって、独特の悲しい雰囲気が描かれていると感じます。それはどういうことかというと、人に忘れられる悲しさ、ですね。人に忘れられるということは、その人の中の自分が消えるということですから、言ってみれば自分がこの世から消えるのに似た体験を味わう事になります。これがこの小説のテーマになってくると思うのですが、物語の序盤にいきなりそういった展開を持ってくることで読者をゾッとさせることで当事者意識を持たせることに成功していると感じます。
それからこの小説のミステリー要素である「記憶屋」の正体を突き止めるストーリーが面白かったです。やっぱりミステリー要素があることで、読者は最終的にこれまで読んできた内容が整理されて一つの解答が導き出された時に、「そういうことだったのか!」と気づきの快感を得られるので娯楽性が上がります。この本にもそういう要素があるので、私は楽しめました。終盤の方で「もしや、あれが正体か」と気づいてしまったのですが、最後のシーンは自分の推理の答え合わせをするように楽しめました。
そのほかで言うと、この小説は一人称視点が切り替わる群像劇のような書き方を取っているのですが、その中の弁護士のストーリーが印象的でした。この話は本編の大筋とは直接関係があるわけではいですが、遼一視点の話より人物の描写に特徴がありますし、泣ける要素として楽しめるんじゃないでしょうか。
まとめ
『記憶屋』は日本ホラー小説大賞で読者賞を受賞した、記憶にまつわるノスタルジックな雰囲気の小説です。「記憶屋」という都市伝説の真実に迫っていくミステリー小説としての一面もあります。他人の記憶を消してしまうことへの功罪について考えさせられるテーマ性を帯びた内容なので、実際何か消してしまいたいような記憶がある人、もしくは身近に認知症などで大切な人に自分の記憶を忘れられてしまった人などは刺さる小説ではないでしょうか。ホラー小説を読んでみたいけど怖いのは苦手という人にもおすすめの一冊です。
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