【感想】『失恋覚悟のラウンドアバウト』いくつもの恋模様が回転するコメディー!(浅倉秋成)

今月のKindle Unlimited対象となった浅倉秋成さんの2016年の小説『失恋覚悟のラウンドアバウト』の紹介です。

初っ端から力強い会話劇で笑わせに来るという私の好みにぶっ刺さる小説で、読んでる最中ずっと楽しかったです。

浅倉秋成さんの小説はこれまで、『教室が一人になるまで』と『ノワール・レヴナント』、『フラッガーの方程式』を読んでいます。この中で言うと『フラッガーの方程式』の作風に一番近いと思います。当ブログでも、『フラッガーの方程式』の記事はかなりアクセス数を稼いでくれてまして、やはりみなさん注目している作家さんなのか、私の熱量が伝わったのかはわかりませんが、今回もそんな記事になればいいななどと思っております。

ただ今回は群像劇という手法を取っていまして、「日の下町」という場所で起こるドタバタ劇を複数の登場人物の視点から見ていき、それらの独立していた話がどこか繋がっているという書き方になっていますね。

別の作者でいうと森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』に類するような作風です。

ですが面白い日本語の表現で畳みかける森見さんに対し、この『失恋覚悟のラウンドアバウト』はもっとライトなギャグを採用していて、恋愛模様も青春を感じるような爽やかな内容に仕上がっています。

この辺りでAmazonのあらすじを挟んでおきましょう。

あらすじ(Amazonより引用)

モテすぎて困る男子高生。魔法少女になると宣言した女子高生。ブラック企業のサラリーマン。盗み癖がなおらない女の子と、彼女に恋する小学生。いくつもの恋と嘘がひとつの町で繰り広げられ、やがて大きな渦となる!巧妙な伏線と軽妙な筆致。デビュー作で編集部を震撼させた新星・浅倉秋成待望の最新作!

ラウンドアバウトとは?

ラウンドアバウトとは画像のように中心の島の周囲を一方向に周回する方式のうち、環状の道路に一時停止位置や信号機がないなどの特徴をもったものを言います。

円形交差点自体は19世紀後半のヨーロッパで作られたそうで、都市の景観上の工夫として採用されました。

20世紀初頭になると、アメリカやイギリスなどで円形交差点が導入されるようになりましたが、交通量が多くなった時に車両が環道内で動けなくなったり、衝突事故も起きたため次第に採用されなくなっていきました。

1960年代にイギリスがそれらの問題解決を図り、環道内の車両が優先する規則を適用し、現代ラウンドアバウトがここから始まりました。

日本では東日本大震災の時に停電による信号機の滅灯で混乱が生じたことを通じて、信号が無くても安全かつ円滑に交通制御が可能なラウンドアバウトが脚光を浴び、それ以降全国的に導入が進みました。

小説内では中心の島の部分にレストランが設置されていますね。ラウンドアバウトについてのイメージをしっかり持っておくと、最終的により楽しめるのではないかと思って載せておきました。

全体的な感想

全部で6話にわかれていて、それぞれの話にオチがついていて面白いですし、前の話で謎だった部分が後の話で真実が明かされたりと、複線回収にも余念がありません

私が一番面白いと思った話は、第四話「寡黙少女のオフェンスレポート」ですね。小学校を中心とした話で、クラスでボールペンが盗まれたことが発覚し、ある女の子に容疑が掛かり、みんなが責め始めた際、主人公の男の子がそれを庇う形で反論するところからおかしな方向に展開していきます。一話のコントみたいな会話劇も捨てがたいですが、第四話の登場人物のキャラ立ちとかルパンネタのギャグセンスなんかが好きです。

このように軽快なテンポで笑わせてくれる小説というのは、ライトノベルでもなかなか無いくらい貴重な存在なので、浅倉秋成さんは独自のルートを切り開いているなと改めて感心します。

私は毎月、浅倉さんの本がKindle Unlimited対象になってないかなと検索しているのですが、今回ついにそれを見つけたので読むことができて幸運でした。

明るく、笑い強めのラブコメディを読みたい方は是非読んでみて下さい。

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