【あらすじ】『六人の嘘つきな大学生』映画化もされた就活の闇をテーマにした思わず唸ってしまうミステリー(浅倉秋成)【ネタバレ無し】
2024年11月24日に映画上映される『六人の嘘つきな大学生』の原作小説がKindle Unlimitedの対象になっていたため、読んでみました。
浅倉秋成さんの小説は元々好きで、当ブログでも何度も取り上げさせてもらっています。
この記事の内容としては、
これから読む人のための作品紹介
私が読んでみた上での感想
読み終わった後に楽しめる考察要素
になります。
重要なネタバレは書かないようにしています。
あらすじ(Amazonより引用)
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
作者について
浅倉秋成さんは「伏線の狙撃手」とも呼ばれ、物語の中に散りばめられた伏線を鮮やかに回収していくような作風を得意としています。
デビュー作の『ノワール・レヴナント』や、『教室がひとりになるまで』もそうですし、今回の『六人の噓つきな大学生』はまさにそのような小説だと思います。
一方で『フラッガーの方程式』や『失恋覚悟のラウンドアバウト』のような、コメディーに振り切った小説もあり、これは作者が過去にお笑いコンビの結成して活動していた経歴から生まれた作品ともいえます。
浅倉秋成さんの作品全体として、私は10代~30代くらいの年齢の人が読者対象だと思っています。
それは登場人物の平均年齢が若いという事もありますが、浅倉さんの文体やストーリー展開が若者向けであるように感じるからです。
どのような内容か
さて、今回の『六人の噓つきな大学生』の内容紹介に移りたいと思います。
あらすじにあるように、高学歴の大学生が行きたがるような有名企業の最終選考に6人の男女が集められ、企業側が提示した特殊な選考方法に巻き込まれていくという内容。
当ブログで以前紹介した根本聡一郎さんの『プロパガンダゲーム』に近いような設定ですね。
『プロパガンダゲーム』では8人が2チームに分かれて戦うようなチーム戦でしたが、この小説では合格者はたった一人。6人のうち誰が志望する企業で働くに相応しいかを決めなくてはなりません。
その最終選考の途中で、6人の知られたくないような過去の黒歴史を綴った告発文が見つかります。
無視することも出来ますが、それを開けば誰かの印象を著しく下げることが出来、その人の合格を阻害出来てしまいます。
いったい誰がそんな酷い告発文を用意したのか、そこがこの小説の中心的なミステリーの部分になって来るのですが、「絶対コイツが犯人だろ」という人物がどんどん入れ替わっていく様は読んでいてすごいと思いました。
先に映画を観るべきか?小説を読むべきか?
まだ公開されてない段階で断定するのは難しいですが、私は先に小説を読んでも映画を楽しめると思いました。
というのは、この小説には読み終わった後に答え合わせをしたくなるような考察要素がいくつかあるので、小説を読んだ後に自分でも気づかなかった伏線の再発見や一週目では意味を捉え切れてなかった描写の別の視点にも気づけたりするので、小説を2回読むのもいいですし、小説を読んだ後に映画を観て自分では脳内で映像化仕切れなかった部分を補いつつ答え合わせするような楽しみ方もアリです。
逆に先に映画を観る事についてですが、あらゆる原作が存在する映像作品に於いて、映画の上映時間内では絶対に描写しきれない内容が原作小説には書かれているので、映画を観て面白ければ小説を読んでみて映像だけでは理解が及ばなかった部分を補完すると良いでしょう。
読後のお楽しみ考察
この小説の読み終わった後に楽しむ考察の部分としては大きく言って、
①インタビューの再読
②投票相手は自分の好きな人
の2点だと思います。
終盤になってやっと発覚する新事実を知ったうえでインタビューの文章を読むと全く別の内容として読めてしまうというのがこの小説の面白い所ですね~。
また投票する相手が好きな相手というのは主人公に関しては、そうだろうな~と思いながら読んでいた方も多いと思いますが、これを他の登場人物にも拡大して解釈しなおすと別のドラマが見えてきて楽しめるのではないでしょうか。
まとめ
浅倉秋成さんの『六人の噓つきな大学生』は映画化もされたミステリー小説で、今年の11月22日に全国の映画館で上映されます。
映画だけ楽しむのもアリですが、後から読み返すと意味が変わってくるという要素がある以上、これは小説でないと楽しめない部分になってくるので、小説版には小説ならではの面白さがあると言えます。
特に就職活動に悩んでいる学生の皆さんなどは、何か救われる部分があるかもしれませんし、面接する側として就活に関わっている方などは当事者として何か感じるものがあると思います。
ブランチBOOK大賞2021受賞したこの作品を是非楽しんでみて下さい。