【感想】『ヴンダーカンマー』(星月渉)/登場人物全員ヤバい人
本日は『ヴンダーカンマー』という小説を紹介したいと思います。
今作品は「エブリスタ」というスマホ小説投稿サイトで第一回最恐小説大賞を受賞したホラー小説であります。読んでみた感想としてはホラーというよりは病的な人格を持った人間にぞわぞわするといった内容かと思います。好きな人にはとことん刺さるタイプの小説ですね。私はこういうの好きなんで結構ハマりました。
あらすじ(Amazonより引用)
山に囲まれた閉鎖的な地方都市、椿ヶ丘学園高校の旧校舎本館でその殺人は起きた。
殺されたのは1年生の渋谷唯香。
それは「16年前」に起きた猟奇事件と酷似していた。鈴子という一人の女学生が死んだ事件と……。
現場に集められたのは学園に通う生徒と教師計5人。
誰が「彼女」と「彼女」を殺したのか……?
ヴンダーカンマーとは?
Wikipediaによると、ヴンダーカンマーとは15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで作られた様々な珍品を集めた博物陳列室だそうです。イタリアの諸侯や有力貴族の間で作られ、16世紀にドイツ語圏に渡って学者などにも作られるようになります。自然物も人工物も分け隔てなく一か所に集められ、サンゴや絵画、ミイラや錬金術の文献なんかも展示されることがあったそうな。これは博物館の前身になったとも言われています。
オーストラリア、アンブラス城のヴンダーカンマー
本書に出てくる「城の里ふしぎ博物館」では、初代館長の内臓などがホルマリン漬けにされて展示されているという設定です。実はこれには元ネタがあって岡山県津山市にある「つやま自然のふしぎ館」では創設者の森本慶三氏の心臓などの臓器がホルマリン漬けにされて展示されているというのだから驚きです! 岡山に行く機会があれば是非行ってみたいですね。
この小説の面白さ
この小説の見所としてはまず、全体的に鬱っぽい暗い世界観ですね。登場人物6人の視点から章ごとにそれぞれのエピソードが語れるのですが、どれも刺激の強い不幸話の連続で、なかなか引き込まれます。その中で共通して出てくる悪魔のような人間がいてですね、読んでいてかなり胸糞悪くなるような人間性なのですが、よくこんな悪魔を描けたなと作者に関心します。読んでる最中この悪魔に敵意を持っていましたが、最終的にそこまで嫌な印象を持たずに済んだのは、流石にこんな人間が生まれるはずがないかと納得できたからかもしれません。
読み終わった感想
小説の形としては、最初に起きた殺人事件について、各人物ごとの視点から全貌を解き明かしていくという内容になっていると思うのですが、正直読み終わってもなぜ殺されたかというのは私の中では釈然としません。しかし、じゃあモヤモヤした終わり方だったのかと言われると違います。要するにこれはミステリーを楽しむ小説ではなく、各登場人物の章で語られる気持ち悪い親子関係とかのどろどろした雰囲気を楽しむだけで結構お腹いっぱいになれたからですね。最終的にそれら個別の話を一つにまとめ上げて終わらせてくれたので、読後感も悪くなかったです。
まとめ
『ヴンダーカンマー』は女性作家による、息苦しい親子関係や、人の弱みに付け込んだ悪人の所業など、どろどろとした人間関係を描いた怖い小説です。不気味さはありますが幽霊的な怖さは無いので、自分の趣味と合うかどうか判断してから読むのがいいと思います。でもこういうサイコホラーってたまに読みたくなりますよね。
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