【書評】『人工知能は資本主義を終焉させるか 経済的特異点と社会的特異点』(斉藤 元章 井上 智洋)/行きつく先は”人類補完計画”!?

我々はいつまでお金に悩ませられるのだろうか。フランスの「世界不平等研究所」は2021年、世界の上位1%の富豪が世界全体の資産の37%を手に入れ、逆に下位50%の人々の資産は全体の2%にしか満たないと発表した。そして我が国日本は長らくデフレである。我々のようなゆとり世代は、デフレ下の日本しか経験していないため、自分たちの下の世代に明るい未来を届けるイメージを持てない。しかも子供を教育する資金を用意するにも苦労するため、少子化が進み日本の労働生産人口が下がるという負のスパイラルに陥っている。

問題は経済だけではない。2045年には人工知能が人類の知能を超え、我々の職業を奪ってしまうという。将棋や囲碁など、もうすでに一部の分野では人間はスーパーコンピューターに勝てない状況になっている。これは現在働いている人だけでなく、これから就職活動を行う若者にとっても、どの分野なら人工知能に乗っ取られないか考えるのは死活問題になっている。やはり将来の日本社会では、人工知能を利用できる一部の人間だけが勝者となり、他の人々は淘汰されてしまうのだろうか。

本書ではそんな経済や人工知能に関する疑問に、二人のプロフェッショナルが対談という形式で答えてくれる。斉藤元章さんは人工知能エンジン開発者で、アメリカシリコンバレーに医療系システムなどを創業。東日本大震災をきっかけに日本に移住し、80件以上の特許を持つ発明を行い日本イノベーター大賞を受賞した。井上智洋さんは駒澤大学経済学部准教授でマクロ経済、貨幣経済理論、成長理論、人工知能と経済学の関係を専門として活動している。

本書の前半は主に経済の話中心で、井上さんが詳しく語り斉藤さんは聞き役に徹している印象を受けた。後半では人工知能の話に移り斉藤さんが勢いを持って話していた。最終的に経済と人工知能の内容はリンクしてきたため、そこは是非読んで欲しいところである。

井上さんの経済論を理解するうえで重要なポイントは、デフレの根本的な原因は日銀がお金を刷らないことだけではなく、技術革新によって供給は急激に増えた一方で、それに需要がついてこれていないことでデフレスパイラルに陥っており、それが世界的な問題にもなっているということだ。それから日銀と政府の国債における関係や、銀行と企業の関係からデフレを説明するなどは他の本では読んだことのない内容だった。私のような経済の素人でも、マクロ経済の片鱗を理解できるほど整理して説明してくれるのは、読んでいて大変有意義であった。

人工知能に関しては、やはり来る「シンギュラリティ・ポイント」以降の世界に対する予想が中心だったと思う。逆に今現在のAIの興味深い技術として、自動で画像を生成するというものが挙げられる。私はYouTubeで「バーバ・パパ」というチャンネルの「AIにおまかせ」という動画を観たが、AIが作ったとは思えないような、しかし人間に作るのも難しいような不思議な映像だった。

斉藤さんはいずれ、人工知能は人間の知能をどんどん超えていくと考えているが、井上さんは仮に超えたとしてもそのあとの進歩は緩やかになるのではないかという、このお二方の意見の違いが面白かった。私は井上さんの説明を聴いて「ドラゴンボール」の神龍を思い浮かべた。神龍は願いを一つ叶えてくれるが、神の力を超える願いは叶えられない。人間も、人間と同等の知能を持つ機械を生み出すことは出来るかもしれないが、人間を超える知能を生み出すことは困難であるという立場だ。

そして二人の話題は将来の日本に移り、最終的に「お金が消える社会」という形で一致する。このお二人の未来予想は、若者の価値観をベースに組み立てられているため、若者として共感できる点も多い。最後はこの記事のタイトルにもあるように「人類補完計画」へと発展するが、その過程については是非本書を実際に読んで確認してほしいと思う。非常に凝縮された内容であるため、経済と人工知能の両方に興味のある方にはおすすめである。

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