【感想】『死者殺しのメメント・モリア』(夢見里 龍)/西洋を舞台にした時空を超えた魔術の戦い

どんな小説?

アメリカやフランスを舞台にした、「死」にまつわるストーリー。第26回電撃小説大賞最終選考まで勝ち残った、夢見里龍さんのデビュー作です。表紙に描かれた、容姿端麗の二人組が、ある目的のために色んな場所を巡っていきます。この二人が普通の人間とは違う力を持っているのですが、そんな彼らしか解決できない問題に挑みつつ、そもそも彼らは何者で、なんでこんなことをしているのかを紐解いていくような小説になっています。ちなみにライトノベルではありません。

文学性に優れている

この小説の特徴として、文学性に優れているということが挙げられます。「文学」とは何かを正確に定義することは難しいですし、村上春樹を読んでていても文学がわからなかった私ですら、「これが文学か」と思ってしまうほど使われる言葉が洗練されていました。自分があまり見ないような表現や漢字が使われているのですが、その漢字が美しい。ただ難しい漢字を使っているのではなく、多くの漢字から作者さんに選び抜かれたものだけが選出されているようなこだわりを感じました。それがこの小説の印象をオシャレなものにしていますし、読後感がいい映画を見終わったような気分になります。

メメント・モリとは?

そもそもメメント・モリとは何でしょうか? メメント・モリの一番簡単な解釈は、ラテン語で「死を想え」という意味です。元々古代ローマにあった言葉でしたが、中世ヨーロッパでペストが流行し、大量の死者を生み出す過程で、この小説でも登場する「死の舞踏」の絵画のように「メメント・モリ」の思想が芸術にも影響を与えるようになりました。

←『死の舞踏』の一例

ヴァニタスとは?

もう一つ、この小説を楽しむ上で知っておくとお得な知識に触れておきましょう。ヴァニタスとは、「人生の虚しさ」を意味するラテン語で「メメント・モリ」や「カルぺ・ディエム」と並ぶバロック期の精神を表す概念です。メメント・モリには死に対する受け入れの精神を感じるのに対し、ヴァニタスからは死の空虚さを感じます。特にヴァニタスの静物画にはドクロが描かれることが多く、生の儚さが表現されています。

まとめ

『死者殺しのメメント・モリア』は、きれいな言葉で紡がれる小説の世界観を堪能しつつ、しんみり悲しいストーリーを楽しむ大人向けの小説だと思います。それから上に書いたように、作者が散りばめた隠し要素みたいなものに関する知識を持っていると、より楽しめるのではないかと思います。私も正直自分の知識が足りていないせいで、この小説の全てを堪能できていない気がします。何か新進気鋭の作家による骨のある小説を読みたい方におすすめです。

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