『底なし淵』(村田久)

この本はまた今までと違った小説です。釣りにまつわる不思議なお話の短編集のようになっています。

著者である村田久さんは、アウトドアインストラクターや、エッセイストとして活動されています。この本もエッセイ集という分類になるかもしれません。なんとこの本の序文は、『陰陽師』シリーズで有名な、あの夢枕獏さんが書き添えています。お二人はよく一緒に東北の自然の中へ釣りに出かけるそうです。これが2017年に書かれているので最近も行ってるかもしれません。ここで夢枕さんは、アラスカやヒマラヤなども見てきたが、それらより間違いなく東北の渓流が美しいと言い切っています。そんなまさかと思いましたが、この本を読んでから、そうかもしれないと思い始めました。

前述した通り、この本は東北地方の、おそらく秋田・岩手の山間部で起きた、釣りにまつわる奇妙なエピソードを短編形式でまとめたものです。私は釣りを全くしませんが、内容は理解できましたし、十分楽しめました。時代背景としては、昭和中~後期くらいなのかなと思いましたので、今の釣りの環境とも違うかもしれません。

それぞれの物語で主人公が変わります。しかし全体を通して、イワナが主人公なんじゃないかと思うくらいイワナが出てきます。同じ地名が出てきたりもするので、直接的なつながりはないにしても、全話を通してゆる~い繋がりを感じました。

この本、ひょっとするとホラー小説にも分類できるかもしれません。もちろん恐怖を感じることはないのですが、この人もしかして幽霊なんじゃ?と思う描写も多々あるので、冷やっとした怖さはありますね。それから魚の描写にも鬼気迫るものを感じます。怖いのは苦手だけど、不気味な雰囲気はすきという人にはおすすめです。ただ実際この本読んでいただければわかりますけど、山の天気とか、そこで自生してる植物とかのほうが、幽霊なんかよりよっぽど怖いんですよね。

よく出てくるイワナについて、基本情報を調べてみました。イワナとは、サケ目サケ科イワナ属の一種。獰猛な肉食性で、昆虫、カエル、ネズミ、蛇なども食べる。白身魚で、食べると美味しく、釣り好きの間でも「渓流の王様」として人気が高い。ヤマメなど、他の魚と混血しやすい。20世紀以降、マニアによる乱獲や、ダム工事などで、各地でその生態が脅かされている。

この本を読んでいると、川のせせらぎが聞こえてくるような、心安らぐ自然が頭の中に浮かぶんですよね。不思議と体が涼しくなったような気がするので、夏におすすめの一冊かもしれません。

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